日本で飼育されている猫の約3匹に1匹が肥満※と言われている現代。猫のダイエットは人間よりも難しいと言われており、うまくいかず悩まれている飼い主さんも多いと思います。

わたしは結婚をきっかけに9㎏のデブ猫の飼い主になり、猫を2年で-2.2㎏ダイエットさせた経験があります。まだ理想体重よりは重いので現在もダイエットを継続しています。
猫は肥満になると病気やケガのリスクが上がります。体臭もきつくなるので家にニオイがこもったり飼い主にとってもデメリットが大きいです。
この記事では我が家の猫がダイエットに成功した実例をもとに、今すぐに実践できるダイエットの秘訣をまるっとお伝えしますので参考にしてください。
※参考:〈都道府県エリア別〉『ペットの肥満』トレンド調査 結果発表|日本ヒルズ・コルゲート株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
ダイエットを決意したきっかけ


我が家の猫がダイエットを始めたきっかけは、結婚した時に夫が連れてきた猫が太りすぎて体臭がきつかったことです。
特におしり周りの毛づくろいができず、排便の度におしりふきで拭いてあげないと便が残ったままになってしまうような状態でした。
消臭剤を使っても猫自体が臭いので家のニオイがとりきれず本当に困っていました。
なにより猫自身の健康への悪影響が心配になってダイエットを夫に提案しましたが、夫はあまり乗り気ではありませんでした。
ある日ワクチン接種と健康診断も兼ねて受診した時に、やはり獣医さんから重度の肥満を指摘されたのもあり本格的にダイエットを始めることにしました。
デブ猫のダイエットに成功してよかったこと


我が家の猫が-2.2㎏のダイエットに成功してから良い変化がたくさんありました。具体的にどのような変化があるのか経験からお話しするので、参考にしてください。
体臭がなくなった
痩せて一番うれしかったのは、猫が自分で毛づくろいができるようになり本来の猫らしいニオイになったことです。
9㎏あった時はおしりに便のカスをぶら下げていたりするので、おしり周りの毛をカットしたり、お尻まわりをウェットタオルでふき取る必要がありました。



布製品などに猫の体臭が移ったりと衛生的にも気になる状況でしたが、家での生活がとても快適になりました。
猫は本来きれい好きなので汚れた状態はストレスになるので、痩せて体臭がなくなったことで猫のストレスの軽減にもつなげることができます。
痩せて毛づくろいが上手になったことで本来の猫らしい体臭になったのが、痩せたことで感じた良い変化の一つです。
動きが機敏になった
痩せたことで本来の猫らしい軽快な動きができるようになり、活動量が増加しより健康的な身体づくりがしやすくなりました。



9㎏あった時はキャットタワーも周囲の椅子などを経由しないと昇ることができませんでしたが、今は地面から直接ジャンプして登っています。
痩せて猫らしい機敏な動きが増えたことで、ダイエットのための運動がしやすくなり健康的な体づくりの好循環が生まれています。
デブ猫のダイエットを成功させた方法とは


この項目では実際にわたしが猫に対して行ったダイエットの工夫をお伝えします。猫のダイエットは基本を忠実に実行し、猫に合わせて工夫してあげることで成功率を高めることができます。
1.フードの種類を変える


猫のダイエットの9割はフードの工夫によるものと思ってもらいたいくらい、フードの工夫は重要です。具体的には、低カロリーで満足感の得られるダイエットフードを選ぶと良いです。
ダイエットフードは低カロリーで必要な栄養素が確保でき、満腹感を感じさせるために食物繊維が程よく含まれているのが特徴になります。
注意点として猫は肉食動物で穀物は消化できないので、動物性たんぱく質が多く含有されている製品を選ぶようにしてください。
猫は警戒心が強くいきなりフードを変えると食べないことがあるので、今までのフードに少しづつ混ぜて1~2週間くらいかけてゆっくり切り替えるようにします。
ダイエットフードに手を付けない場合は今までのフードに混ぜてあげて慣れるのを待ってみますが、それでも食べないようなら他のダイエットフードに変えてみてください。



最初はお試しサイズを購入すると、食べなかった時に無駄になりません
ダイエットフードの選び方については三ツ池動物病院さんのYouTubeで分かりやすく解説されていたので、参考にしてみてください。
我が家の猫は魚アレルギーがあり食べられるフードに制限があるので、最初は獣医さんにすすめられたロイヤルカナンの満腹感サポートをあげていました。
しばらくして飽きたのか食べなくなってしまったので、今はニュートロの減量用と交互にあげるようにしています。
ダイエットをする際には減量に特化したフードを選ぶことをおすすめします。今までのフードから切り替える時は1~2週間を目安に徐々に切り替えるようにします。
2.フードの量を調整する


猫のダイエットには適切なフードの量を与えることも重要です。ダイエットフードの場合は「目標体重」の欄を参考に1日量を設定します。
1週間に1~2%減量できるようにフードの量を5~10%づつ増量・減量し、猫それぞれの理想量になるように調整してください。
猫によって目標体重の目安として猫は1歳の頃の体重が適正体重といわれているので、1歳の頃の体重が分かる場合は目標にすると良いです。分からない場合は、獣医さんに骨格などから目標体重を判断してもらってください。



我が家の猫は1歳の頃の体重が不明だったので、獣医さんから5㎏目標と言われて調整していました。
ダイエットフードをあげる時は1g単位で測れるはかりを使って、正確な量をあげるようにしてください。目分量だとフードの量による体重の変化を観察しにくくなるためです。
ダイエット中におやつをあげるかは飼い主さんの考え方や、猫が欲しがるかどうか次第です。



ちなみに我が家はおやつは週に2回ほどあげています。おやつは低カロリーのものもしくは、おやつ分のフードを減らしてあげています。
猫の減量ペースは1週間で1~2%(9㎏なら90~180g)にします。体重が減らない場合はフードを更に5~10%減らして様子を見てください。逆に減りすぎる場合は5~10%食事量を増やして対応してください。
猫のおねだりが多い場合は、量を変えずにあげる回数を増やして対応する・食事以外の楽しみを与える(撫でる、お気に入りのおもちゃで遊ぶなど)といった対策が有効です。
注意点として、ダイエットさせたいからといきなりフードを減らしすぎるのは肝リピトーシス※のリスクがあるので避けてください。
肝リピトーシスとは:本来分解されるはずだった脂肪が肝臓に過剰に蓄積することで、肝臓機能が低下してしまう状態をいいます。肥満猫が急激にダイエットしたことで発症することがあります。
猫のダイエットは目標体重に合わせたダイエットフードの量から開始し、体重の1~2%/週の減量ペースになるようにフードを増減するようにしてください。
3.運動の機会を増やす工夫をする


猫のダイエットは9割がフードと言われていますが、運動の機会も大切です。猫は1度に長時間運動するのは難しいので、1回数分程度の身体を動かす遊びを複数回行うようにするようにします。
肥満猫は身体が重くて動きたがらないことが多いので、あまり動かない場合はフードを使って動くように促したり、猫じゃらしなどお気に入りのおもちゃを与えるのが効果的です。
猫は横移動より縦移動が得意な生き物なので、キャットタワーで自然に運動できる環境を作るのも有効です。肥満猫の場合は普通のキャットタワーだと小さすぎる場合があるので、多頭飼い・大型猫用を選ぶのがおすすめです。



我が家の猫は痩せるにつれてタワーの上段も使うようになりました。キャットタワーは体重の変化からくる動作の変化が分かりやすいという意味でもおすすめです。
肥満猫は身体が重く運動に消極的な場合が多いです。
フードやおもちゃをうまく使って短時間で複数回、日々の生活で身体を動かす機会を設けるようにすると良いです。
おもちゃでおすすめなのは「カシャカシャぶんぶん(カシャぶん)」です。保護猫活動をされている方におすすめしてもらった猫に大人気のおもちゃです。
実際に使ってみると、あまり遊びたがらない我が家の猫でも興味を示して遊んでくれました。ただ、壊れやすい作りになっているので要注意です。
ダイエット前に押さえておくべきポイント


猫を健康的にダイエットさせるには注意すべき点が存在します。注意点を押さえて安全にダイエットを進めるようにしてください。
1.本当にダイエットが必要かどうかを確認する
猫によって適正体重は異なるので、ダイエットを始める前に本当に猫にとってダイエットが必要かどうか判断する必要があります。
猫は1歳の頃の体重が適正体重といわれています。分からない場合は、獣医さんに骨格などから目標体重を判断してもらってください。
どのくらい肥満なのかの判断は、猫のボディコンディションスコア(BCS)で猫の肥満度を判断すると良いです。


BCSは外から肋骨や腰骨・骨盤が見えるか、背骨や肋骨に触れるか、腰のくびれがあるかなどで判断するので、普段猫と触れ合う中で判断することができます。
画像引用:https://www.royalcanin.co.jp/dictionary/column/20150220
1歳の時の体重と現在と比較したり、BCSを活用することで本当に愛猫にダイエットが必要かを判断してからダイエットを開始するようにしてください。
2.検診などで健康状態を把握しておく
肥満は様々な病気を引き起こすリスクがあります。病気が隠れている場合があるので、ダイエット前に健康診断を受けることをおすすめします。
獣医さんから減量についてアドバイスをもらうことができて、異常の早期発見・治療につなげることができるためです。
たとえ今は肥満以外に気になることがなくても、元気な時の検査の結果が分かっていると不調の時に比較することができ治療の重要な手立てとなります。
肥満自体が病気のリスクとなる状態ですので、健康状態をみてもらったうえでダイエットすることをおすすめします。
3.多頭飼いの場合はフードの管理に注意
多頭飼いしている場合、肥満猫が他の猫のえさを食べてしまいダイエットが進まない可能性があります。そのため、肥満猫が他の猫のエサを食べないようにする工夫が必要です。
具体的には別々の部屋で食事をとらせる、置き餌せず飼い主が見ている間に食べてもらうようにするのが有効ですが、毎回は難しい方が多いと思います。
他の猫がちょこちょこ食べの場合、肥満猫に届かないところに置き餌を設置してみてください。
自動給餌機を使うと特定の猫に声掛けしてからエサをあげることができますし、少しづつあげることができるので普通に置きエサするよりも肥満猫が食べてしまう量も少なくて済みます。
マイクロチップが入っている場合は特定の猫が近づいた時のみ蓋が開く自動給餌機を使うと、肥満猫が他の猫のエサを食べてしまうリスクをなくすことができます。
多頭飼いの場合、肥満猫と他の猫のエサが混在しないように注意する必要があります。
デブ猫のダイエットに家族が消極的な場合の対策


猫のダイエットには家族の協力が不可欠ですが、中にはこっそりエサをあげてしまう家族に困っている方も多いと思います。



そもそも我が家の猫が肥満になったのは避妊手術後というのもありますが、独身時代の夫が猫が欲しがるまま無制限にエサをあげていたのが原因でした。
夫は動物好きで心優しいですが面倒くさがりなので、肥満を指摘されても「おねだりされたらあげちゃう、測るの面倒くさい」という感じであまり気にしていなかったようです。
そんな夫に猫のダイエットの必要性を自覚させるためにとった解決方法は「根気よく、協力をお願いする」「健康診断を受け、獣医さんから指導をしてもらう」です。
最初はつい夫にキツめに注意していましたが、猫が可愛いと思ってエサをたくさんあげている相手の行動を否定したり口うるさく言うのは逆効果で、逆に頑なになってしまうので注意してください。



我が家は猫を健康診断に連れていくことで解決しました。
すでに脂肪肝になっていることがわかり、肥満がどれだけ負担であるかを獣医さんから説明されたことで、夫は協力的になってくれました。
猫は太りやすく痩せにくい動物


猫のダイエットが大変というのはよく知られていますが、理由については様々です。具体的な理由は以下の通りです。
・元々の猫の特性:猫は体力を消耗しづらく太りやすい体質です
・運動不足:飼い猫は狩りの必要もなく、安全な環境で寝ていることが多く消費エネルギーが少なくなりがちです
・カロリーの摂りすぎ:フードやおやつのあげすぎでカロリーオーバーになって太ってしまいます
・ストレスで過食:何かしらのストレスで過食になって太ってしまう子がいます
・避妊去勢手術:ホルモンバランスの変化で太りやすくなる傾向があります



猫に合った適切な量のフードを与えることで、肥満のリスクをかなり下げることができるのがわかります。
猫にとって肥満は万病のもと


おなかの周りに少し余分な重量を持つデブ猫は可愛らしいですが、太っているということは猫にとって大きな問題でもあるのです。
猫の1㎏は人間の15㎏といわれています。例として我が家の猫が最高に太っていた時(9㎏)は人間に換算すると135㎏もある計算になるのです。



猫の体重を人間の体重に置き換えてみると、肥満の負担が猫にとってかなりあるということが理解しやすいです。
具体的に肥満によってもたらされる悪影響は以下の通りです。
- 糖尿病:肥満猫は理想体重の猫の最大4倍、糖尿病になりやすいといわれています。
- 心筋症:心臓に負担がかかるので、心筋症の発症のリスクを上げてしまいます。
- 関節炎・椎間板ヘルニア:肥満は猫の骨や関節にじわじわと負担をかけ、骨関節系の病気のリスクが上がります。
- 呼吸器疾患:首の周りに脂肪がつくと、気道が圧迫されて呼吸がしにくくなってしまいます。
- 肝臓疾患:肥満は脂肪肝を引き起こす可能性があり、猫の肝臓疾患のリスクを高めます。
- 皮膚炎:肥満猫は毛づくろいが十分にできないので、汚れがたまって皮膚炎を起こすことがあります。
肥満が持つ健康リスクの一部を挙げましたが、人間と類似している部分が多いです。猫の健康を保つためには、適切な食事や運動習慣を維持することが重要です。
参考:気をつけないと死に至るかも?太りすぎた猫に起こる健康被害5つ | ねこちゃんホンポ (nekochan.jp)
猫のダイエットは飼い主の猫を想う気持ちが一番大切


猫のダイエットを成功させるためについて、知っておきたいことのまとめは以下の通りです。
1.フードの種類を変える:猫のダイエットの9割はフードの工夫がカギ。ダイエットフードは少量づつから慣らし、食べない場合は根気よく与え続けるか他のダイエットフードに変えてみるのも手です。
2.フードの量を調整する:1週間に1~2%のペースで減量できるようにフードの量を5~10%づつ調整するように計量してあげます。量は変えずにあげる回数を増やすなど、満足できるよう工夫を。
※急にフードを減らしすぎるのは絶対NGです!!
3.運動の機会を増やす工夫をする:1回数分程度の遊びを複数回行うようにします。肥満猫は動きたがらないことが多いので、フードで誘ったり好きなおもちゃを与えたりしてみると良いです。
※本当にダイエットが必要かどうか・体調に問題がないかどうか、獣医さんに相談してからダイエットを始めるのがベストです。
最後に、猫のダイエットにおいて一番重要なことをお伝えします。それは「飼い主の知識と心持ち」です。



この記事を読んで、ごくごく当たり前の内容であると思った方も多いかもしれません。しかし、当たり前と思っていても実践してみると、とても難しいことに気付くはずです。
ダイエット中はエサを催促する猫の鳴き声やつきまといがひどくなる場合が多く、何度も根負けしてしまいそうになります。
猫のダイエットの成功のためには、飼い主側が気持ちをグッとこらえることが大切です。対策として、撫でたり遊んであげるなどおやつ以外の楽しみを与えてみましょう。
デブ猫は独特の可愛さがありますが肥満は万病のもとになってしまいます。長く愛猫に健康でいてもらえるように、ぜひこの記事を参考にできることから取り入れてみてください。




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